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日々の破片

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2021-11-23

_ やとの家

甲州へ旅行するときに、甲州街道を使ったので八王子を通過したわけだが、どうも街並みがおもしろい。

というわけであらためて八王子へ軽くでかけてみた。

とはいえ、八王子については知らないわけでもないが、あらためて観光に行くと考えてみると全然知らない自分に気づく。

で、ちょっとネットで検索したら一休のサイトが出てきたがこれはひどい。最初の数件は八王子だがどんどん八王子をはずれてしまってなんの役にも立たない。

それでもいろいろ調べてみたら、小泉家という旧家が目についた。

そう言えば以前吉田家というのを訪れて随分おもしろかったので、そこに行くことにした。

で、妻のスマホのYahooに道路案内させていたら「やと」で左折と言われた。

やと? どうも聞き覚えがあるようなと、昨年買ったやとのいえという絵本を思い出した。江戸時代から現代まで多摩丘陵にあるやと(丘陵に谷が食い込んだ地形)の風景の変化を一見の民家にフォーカスして静謐でありながら波乱万丈の歴史を描いた実におもしろい本だ。

やとのいえ(八尾慶次)

で、周囲の景観を見れば丘陵に同工異曲の戸建てが立ち並ぶ(特に右手の鋸の歯状の家並みがおもしろいが、左手の川の向こうの丘陵のも興趣がある)不思議な風景だ。でも街道(野猿街道になるのかな)沿いは商工の家で時間差がある。

で、目当ての小泉家に着いたら、市の重要文化財だけど生活しているから敷地に入るなと立て看板があり、入り口には柚子(もちろん知っている)とはやとうり(おれには初見)を適当にビニール袋に入れて並べた台があって1袋100円と書いた札と貯金箱が置いてある。

まあ家を見世物にしているのを見学に来たのだから、払うものは払うのが筋だろうと、特にはやとうりというのは初見なくらいだから当然食べたことがないので買ってみた(まだ冷蔵庫の野菜室に入っている)し、妻は柚子は正月に使うから買うといって買った。

それにしても確かにやとのいえだった(中とか裏庭とかも見てみたいものだがしょうがない)。

で、近くの絹の道資料館にも立ち寄って、展示物を眺める。

駐車場にはおれの車だけだし、受付の奥で爺さんが閑そうにしているし、入場料もないし、誰も来ないだろうと思ったら、それなりに人の出入りがあって意外だった。

展示物はなかなかおもしろい。

元々のおれの知識から、明治の一大輸出産業は当然生糸と絹で、群馬の養蚕地帯から高崎-八王子-横浜(電車でいえば八高線-南部線、国道であれば16号)の東京迂回輸出ルートで八王子はターミナル駅だから生糸の集積機能を持っているのだろうと想像していたら、とんでもない話で、やとのある鑓水が養蚕のメッカでもあり絹の豪商が軒を連ねていた地帯だった。良く見ると小泉家の屋根の上に屋根があるから、あれも養蚕農家で元は蚕室だったのかも知れない(現役の養蚕農家ということはないのではないか?)。

八王子は単なる集積場ではなかったわけだ。

群馬-横浜に八王子が絡むのは単に東京迂回ルートというだけではなく効率よく二つの産地と貿易港を結んでいたのだな。

で、これらの豪商が富と知識から三多摩民権派の中心となり、そこに神奈川県知事と東京府知事のゲリマンダー政策で多摩川の向こうにも関わらず東京市に組み込まれて……と話がつながるのかと、途中の調布(なぜか旧甲州街道ルートをYahooが選択したのだが渋滞していたので良く観察する余裕があった)が、びっくりするほど立憲民主党の事務所やポスターが並んでいて、調布立憲派かと思ったのとも時代を越えて結びつかなくもなく、実におもしろかった。


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