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日々の破片

著作一覧

2023-02-04

_ メトライブビューイングでめぐりあう時間たち

東劇でめぐりあう時間たち。作曲はケヴィンプッツという人でおそらくこれが初めての人。

キャストが、ルネ・フレミング、ケリー・オハラ(メリー・ウィドウは良かった)、ディドナートと豪華布陣だが、元々ルネ・フレミングの発案で作品の制作そのものが決まったみたいだからピーターゲブルとしても力を入れまくったのだろう。

妻に何を観に行くのかと聞かれてめぐりあう時間たちと答えたら私も観たとか言い出すのでどういう意味かと思ったら映画化もされていたらしい。

物語は花は私自身で買うというコーラス、街の雑踏、1999年ニューヨークで幕を開ける。天使なのか死神なのか、物語に芯を通す役らしきラクダ色のコートを着た黒人歌手(ファルセットなのかソプラノなのかわからん)が良い。

中央にルネ・フレミングが登場。サリーというパートナーと一緒にパーティーの準備をしているのだがどうも話し合いがギクシャクしている。編集者でかっての恋人(どうも病気で長くないらしい)の作品の授賞式の前に内輪のパーティーを開こうとしている。音楽は普通の穏やかな無調で最近のオペラはだいたいこんな感じだな。外に出るとダロウェイ夫人と呼ばれるがその呼ばれ方は好きではない。彼とは夏の終わりに別れを私から切り出した。田舎者のルイスを愛しているのが明らかだった。花屋と熱烈なキスをする。

低音の繰り返しが印象的。

上手にディドナート登場。ダロウェイ夫人の冒頭が決まらない。朝食を巡って夫とのやり取り、女中はひどい扱われよう。森へ散歩へ行く。音楽は普通に流れる。

音楽がスチャラカすると50年代アメリカっぽいパステルカラーの室内が下手に登場。ケリー・オハラは今読んでいるダロウェイ夫人をあと1ページ読みたくても子供が邪魔をし夫の見送りをしなければならない。あの人は浮気をしているのかしら。ケーキを作るが子供は自分の思い通りには行動しない。友人が入院中に犬(かなぁ)の世話を頼みにくる。キスをする(花屋とニューヨークのとは雰囲気が異なるが、考えてみるとキスはこの2回が印象的で、どちらも女性と女性)。荷物をまとめて子供を預けて出ていく。舞台の色合いとは異なり、音楽をあえて薄っぺらにしているように感じる。

交互に物語と音楽を溶け合わせながら進む。ルネ・フレミングがパーティーの主役のリチャードのアパートを訪ねる。顔に斑点のメークをしているのでエイズなのだろうなと思わせる。君と過ごした一夏を思い出す。

2幕の冒頭でルネ・フレミングとディドナートの2重唱。

ルイス登場。リチャードのアパートを見上げている。そうか、ルイスの苗字はウォーターズで、ヴァージニア・ウルフの最期の川や一夏の海、花には水などいろいろ象徴する役回りなんだなと今気づいたが端役ではなく君を憎んでいるとルネフレミングに向かって歌いまくる。リチャードは僕の体を愛したけど、それ以外のすべてで君を愛していたんだ。彼の小説は読んだ? 読んだ。500ページの中のすべてが君のことだ。僕のことは3ページ、でも最後にちょっと言及される母親に比べればましだけど。

物語の構造が見えてくるので、やはりルイスは重要な役回りなのだな。

リチャード、窓に腰掛けている。ルネフレミングとのスリリングな会話。さすがに90年代末なら抑制剤もできている(レントよりも後の時代だ)と思うが、それ以外にも薬(これで感染したのだろう)やらなにやらいろいろやりまくっていたので今更どうにもならないのかも知れない。

詩人を殺し、夫人は生きることにヴァージニア・ウルフは決める。

主役不在のパーティにリチャードの母親がやってくる。まるでばらの騎士のような三重唱。

ダロウェイ夫人(ヴァージニア・ウルフ)

幕間の舞台美術の意図説明がおもしろい。ヴァージニア・ウルフの家はナチュラルカラーで合唱団は書物。ケリーオハラの家は50年代ポップで合唱団は台所用具。ニューヨークの合唱団は花。

特に言及はなかったが、ヴァージニア・ウルフの舞台はほぼ地に着いている。ニューヨークは上下する。ケリーオハラはたいてい宙に浮いている。特に逃げ込んだホテルの部屋は高い位置にある。ページボーイが、ニューヨークの謎のラクダ色のコートやヴァージニア・ウルフの女中のように振る舞う。

ケリーオハラが家を出た後、魯迅が考えるノラのように過ごしたのかどうかはわからない。第2子は本当に存在したのだろうか?

これは良いオペラだった。


2023-01-22

_ 新国立劇場でキングアーサー

場所は新国立劇場だがホリプロのミュージカル。

作者は、モザール1789の人で原題はLa Légende du roi Arthurだから「アーサー王伝説」とかのほうが良い感じ。

それはどうでもよくて、随所にこのグループらしい、アニメ声女性のポップソング、やたらと力の入った歌唱による敵役の歌とかが入る。のだが、手慣れすぎているせいか、いささか古臭くも感じる(とは言え好きなんだが)。

La légende du Roi Arthur(VARIOUS ARTISTS)

(好きなんだが、グィネヴィアはマリーアントワネットやコンスタンツェに被るしメレアガンはサリエリに被るし(第1幕では。3幕以降はなんか別の世界となる)、ならばモザール聴いていればいいじゃんという気もしないでもない)

物語はフランス寄りのアーサー王伝説なのでケイ卿は無能な道化者(道化師ではない)、ランスロ(というかなぜフランス人がブリテンの田舎の湖の畔に住んでいるのかは謎)は心技体すべてが別格の騎士、グィネヴィアは愛のない(いや嘘だろ)結婚をしてしまった悩める女性とはなっている。ガヴェインはアーサーの師匠格だがそれほど活躍はしないし、ボオールやペルセヴォは出てこない。

本来の話(ケイが剣を折ったために、そのへんに突き刺さっている剣をアーサーが抜いたら、いきなりみんなが跪くというようなドラマティックな展開)はともかく、物語はアーサーとメレアガン、モルガンの確執にランスロとグィネヴィアの愛の物語がからむというように変わっている。

最初マーリンが王が死んだあとに後継者がいない。だが、大丈夫、救国の英雄が出現すると預言して舞台背景を説明して引っ込むと、亡きブリテン王の後継者を決めるために騎士たちが試合を繰り広げている場面となる。カイは剣を家に忘れてきたために参加できない。どうしようアーサー? と弟(この時点ではそうとしか説明されない)のアーサーに聞いたりしている。

優勝したメレアガンがエクスカリバーを引き抜こうとするが剣はびくともしない。

そこにアーサーが登場。マーリンに言われた通りに剣に手をかけるとするりと手に納まる。アーサー王誕生である。

人生をかけて修行を積んで騎士の中の騎士となったメレアガンは恥辱にまみれて去る。

かくしてメレアガンは実力で王座につこうと、手近なウェールズ(かどうかは忘れた)に侵攻し、領土を正規に入手するために王女のグィネヴィアを寄越せと王を脅す。助けを求める急使がアーサーの元に来る。

アーサーの政治目標はマーリンに言われた通りに、サクソン人の侵略から国を防衛することと、そのために国王の下に強固な地方豪族による一枚板の体制を構築することにある。

そのためには豪族間の争いは国王として鎮めなければならない。

かけつけたアーサーはガヴェイン仕込みの剣技というよりはエクスカリバーの魔力によってメレアガンを打ち負かす。

騎士でもないお前をおれは認めないと叫ぶメレアガン。

アーサーは「騎士の中の騎士、メレアガンによって騎士を拝命したい」とエクスカリバーを手渡す。

とてつもない屈辱に震えながらアーサーに対してエクスカリバーの名のもとに騎士の位を授ける(王と騎士というのは位相が異なる地位なのだな)。

そのあとにすばらしい歌を歌う。どう見ても聞いてもここまではメレアガンが主役も良いところだ。

さて助けられた地方の王はグィネヴィアをアーサーに与える。この時点ではグィネヴィアもまんざらではない。

が、マーリンに政治を教えられていくうちにアーサーはプレッシャーに悩み始める。

しかも妹を称する謎の魔女(マーリンの魔法使い呼ばわりもそうだが、非キリスト教の宗教団体はすべて魔扱いというだけのことだ)のモーガンが城にやってきていろいろアーサーの父親の悪行を吹き込む。私の母をお前の父は犯したのだ。生まれた不義の子がお前だ。母はそれで心を病み死んだ。お前の父の非道の行いにはマーリンも荷担していたのだ。などと吹き込む責め立てる。アーサーが聞くと正直者のマーリンは、だって御父上はモーガンの母親のことを本気で愛したんだからしょうがないじゃん、と言い放つ。

なるほど、西欧におけるloveという概念は肉欲と等しいのであるな。エロスとタナトスの問題はのちに日本へ渡った宣教師を悩ませ、love(のポルトガル語)の翻訳語として「御大切」をひねくりだすことになるのもしょうがない。

と、本気で愛したら強姦OKという考えにはさすがに現代の脚本だけにアーサーもすんなりとは受け入れられず悩む。

あまりにアーサーがいろいろ悩んでいるのでグィネヴィアは孤独を感じる。

そこに国内ではイケメンとして知られるが実力も伴うランスロ登場。ひとりでふらふらしているグィネヴィアを人妻とは気づかずに騎士として忠誠を誓いかけてしまう。

というような調子で物語は進む。

ケイが悩むところはおもしろい。アーサーの父親が前国王ってことはおれとは異父弟、と思っていたら母親も違うってことは、おれは一体あいつのなんなんだ(この物語ではケイ卿は円卓の騎士には含まれない)? そこにマーリン登場。「そりゃ乳兄弟じゃん」「なるほど!」これは見事な説明でマーリングッドジョブと思わず感心。

曲のいくつかはケルト調にしようとしているのだが、なんか日本の音頭のようにも聞こえる(テンポの問題のような)。

物語的におもしろいなと思ったのは、アーサーの敵はサクソン人なのだが、結局ブリテンはサクソン人に支配されてしまって、現在の主流民族はアングロサクソン(イギリス化したサクソン人)だという点だ。でもアーサー王はイギリス人の歴史的英雄とはなっているらしきところがおもしろい。

この構図を日本にあてはめると建国の英雄が熊襲タケルのようなものだ。が、実際には建国の英雄はコウスあらため大和タケル(タケルの名前は熊襲タケルが与えたことになっているので、名は残せたと言えなくもない)であって、あくまでも熊襲は滅ばされる敵側でこの違いが興味深い。ちなみにアーサーは語源としては熊男らしいので、まったくもって熊襲であった。

歌手は(特に3幕の死にそうなほどファルセットで歌いまくるメレアガン、それにしてもなぜここでこんなに大変な曲を持ってきたのかは謎だ)全員うまいものだし、演出も美しい(舞台美術も良い)。

とても楽しめた。


2023-01-20

_ 南部の反逆者

録画したラオール・ウォルシュの南部の反逆者(これは酷い邦題。天使の野郎どもが良い(女性もいるけど元水夫長今船長、しっかり北軍でのし上がるために居残るクラ坊、結束は固い))を見た。満足しまくり。ほとんどの白人男性(主役の女性も)がここぞとなると差別主義者の馬脚を顕す演出が上手い。

それにしてもクラークゲーブルの声が良いことに気付く。声が良いからイヴォンヌデカーロが街角の奴隷の公開入札のポスターを見てゲーブルの行動の凄さを思い出すシーンが生きる。

とはいえ船長とゲーブルが嵐の中庭ではしゃぎまくるシーンが1番好き。

主演として最初にクラークゲーブルがクレジットされたこと以外はわからないまま観始める。

黒人奴隷が脱走して捕まるところから物語は始まる。

農園主は鞭打ちをしよとする奴隷商らしき人たちを制止する。父と娘マンティの二人と大勢の奴隷がいる屋敷だ。奴隷の一人が娘に将来は農園主になること言うと別の奴隷が怪訝な顔をする。

主人は家庭教師から教わることはなくなったとマンティに告げ彼女は寄宿制の女学校に入ることになる。

学校に9年間在学していることで級友とは奇妙な隔たりができている。が、セスという牧師見習いと恋仲になったりそれなりに楽しく暮らしている。セスは人類は平等と考えているので奴隷制度に批判的だ。あら私の父は奴隷を鞭打ったりはしないわ。いや奴隷に優しく接することはダブルバインドすることだからそれも良くない。奴隷制度そのものが問題なのだ。(わりと物語の最初に高邁な批判を周囲をものともせずに語るのはアンドレアシェニエみたいだが、セスの役者はクレジットされていないか後のほうなので、こいつが端役なのは間違いないなぁと観ている)

父親危篤の報に農園に駆け付けると、様子がおかしい。奴隷商が来て、お前は奴隷と死んだ親父の娘だから奴隷であると宣告して娘を他の奴隷と共に連れていく。家庭教師の陰謀らしき様子が描かれるので、その陰謀を解決する話なのか? と思うと全然違って、マンティが黒人として扱われることはその後も変わらない。もっともイヴォンヌ・デ・カーロはどう見ても黒人とのハーフには見えない。

船の中で別室を与えられて奴隷商が迫るが撃退するのだが(最後には首を吊って見せる)、長くは続かないことは暗示される。

オークションにかけられて一人の男に値踏みされているところに、5000ドルと声をかけながらクラークゲーブル扮するヘイミッシュ・ボンド登場。直前の元気な奴隷が200ドル程度だったことを考えると破格の値付けなのだろう。

せっかく高値で買ってもらってそれなりの生活を用意してもらったにもかかわらず娘はとげとげしいので観ていて不快になる。が、船の中でいろいろあったのだろう。

クラークゲーブルのミシシッピの館はあばら家と本人には呼ばれているが立派なものだ(中庭を取り巻く回廊に部屋が配置されていておもしろい。フランス風なのか?)。ミシェルという女性とラウルという男性が特に重要な役として紹介される。が、とにかくマンティはすぐにでも脱走しようとして目が離せない。

嵐の夜、館を二人の男が訪れる。一人はすぐ帰り、一人は居残る。ヘイミッシュの古い友人(部下のようだ)の航海長、今は自分の船を持つ船長がいきなりラムをぐい飲みしてどういう男か示される。この一連のシーンはとても好きだ。それまでのヘイミッシュと雰囲気を変えて二人は腕相撲したり馬鹿話をしたりし続ける。二人がついている机は中庭のはずだが嵐は音と稲妻で示される。

船長が帰ってヘイミッシュがふと回廊を見上げるとマンティの部屋のフランス窓が開いていることに気付く。

マンティの部屋にカメラが変わる。嵐にまぎれて脱走したのか? と思うと普通にベッドに寝ていて、風音で目が覚める。窓を閉めようとするが風が強くてびくともしない。

別の側の窓からいきなりヘイミッシュ登場。すごい腕力で窓を閉めて去っていく。

このシーケンスは二人の関係性の変化を見事に示していて抜群。船長の訪問からの一連の流れは観ていて実にわくわくする。

その後、ヘイミッシュはマンティが旅立てるようにお膳立てしてから同じ船で農園へ向かう。マンティは農園で下船せずにそのまま北部へ行くようにはからってある。

岸辺に多数の奴隷たちがいてハレルヤを歌っている。ヘイミッシュの帰還を歓迎するためだ。

マンティは結局下船する。

館(こちらはミシシッピの家より遥かに立派)にシャルルというフランス語を話す紳士が近づく。最初ヘイミッシュはマンティを紹介しようとしないどころか会わせないようにしようとする。マンティが抗議するとやつは紳士ではあるが……と口を濁す。

ヘイミッシュはマンティを残して買い付ける予定の廃農場を見学に旅に出る。

ラルーはセスのようにダブルバインドを自覚している。ヘイミッシュがおれに優しくすることが問題なのだ。機会があればヘイミッシュを殺すとマンティに言う。

マンティはシャルルと親しくなるが、突然シャルルが襲い掛かってくる。黒人は文句を言うな。ラルーが助けに来ると考えているだろうが、野郎がおれに手を出せば縛り首だからそれは有り得ない。だから大声を出すな。

が、マンティーは叫ぶ。駆け付けたラルーは少しためらった後にシャルルを殴り倒す。

ラルーが犬に追われている。が、ラルーは沼の中に入っていく。犬は匂いが追えなくなりクィーンとか泣きながら追跡者に謝る。ここから先は延々と沼だから野郎の墓場になるだろうと言いながら追跡者たちは踵を返す。

北軍が勝利する。南部州旗がおろされて星条旗がかわりに上がる映像で示される。

マンティはヘイミッシュになぜ結婚してくれないのか? 私が黒人だからか? と問い詰める。

ヘイミッシュは自身の過去を語る。若い頃アフリカで当地の部族長と組んで村を焼き払い女子供を殺して奴隷を詰め込んで財をなした。この話を聞けば黒人のお前はおれとの結婚を望まないだろう。

マンティは勧められるままに館を後にして市街で一人暮らしを始める。ここはすごく不自然な気がするが(マンティ自身は自分を全然黒人として自覚していない、それはラルーにも指摘されるし、衝動的に犬の番人のくせに人間を番していると口走ったりもする)まあそういうものとして観続ける。

シャルル登場。北部の野郎が収奪できないように綿やサトウキビを燃やすぞ。

ヘイミッシュは即座に断るが、北軍の将軍の名前と放火犯は縛り首という命令が出されたことを聞かされて南部魂に火が点く。かくしてすさまじい炎上シーンが続く。

放火犯として追われるヘイミッッシュ。木陰に隠れていた黒人兵士がヘイミッシュを見つける。おれは北軍兵士になったが、今でもあんたを主人と思っている。廃農場に食料などは用意してある。そこへ行け。ヘイミッシュ逃げる。黒人兵士は追跡者たちに別の方向を示し、あちらで物音がした。ヘイミッシュだと思う(この言い回しはうまいと思った)。追跡者たちはヘイミッシュが逃げたのとは別の方向へ向かう。

北軍の将軍がかすなのは、町を歩いている女性から侮辱された次のシーンでは将軍命令として北軍を侮辱する南部女性は街の女として扱っても良いという布告を出すことで示される。

この布告を見た北軍兵士3人組は町を歩くマンティを罠にかけて侮辱されるように振る舞いまんまと命令にある通りに手籠めにしようとする。が、それを生真面目な北軍中尉が見ていたせいで追い払われる。

かくしてマンティは北軍の中尉と良い仲になるのだが、彼の所属する部隊の隊長がセスだった。中尉の書いた報告書にマンティの名があることに気付くとダンスパーティーの会場でまんまと中尉を追い払ってマンティに近づき再会を喜ぶ。

が、しょせん借り物思想の平等主義なのでマンティに対して黒人奴隷なんだからOKだよなぁと手を出そうとして拒絶される。あわてて謝るがもう遅い。

行く当てもなくマンティはヘイミッシュの館に行くと灯りが見える。中に入るとラルーが主人の椅子に腰掛けている。ラルーは北軍の黒人部隊に入り出世街道を邁進中なのだった。というのも、ヘイミッシュは禁を無視してラルーに高度な教育を授けているから普通の奴隷とは頭の中が異なる(それは最初の登場時に、ヘイミッシュの代わりに相場の動きや運輸状況からいつ綿を売るのが最高益となるかの戦略を話すシーンで示されている)。

ヘイミッシュがいると思ったのか? やつは1000ドルの懸賞金がかけられている。

ラルーからヘイミッシュが廃農場に潜伏しているからこれから捕まえると聞かされたマンティは一緒に廃農場へ向かう。

一方、廃農場(川辺だから海辺だかにあることは先に話されている)に船長の船が近づく。ヘイミッシュ、助けに来たぜ。

やっぱりあの船長が助けに来ると思った、と嬉しくなる。

が、まだ終わらない。

ラルーがヘイミッシュの始末について悩む。ヘイミッシュはアフリカでの略奪時に倒れた女の下に赤ん坊がいること、それも串刺しにしようとする奴隷狩りの部族長の部下を殺して助けたこと、それを部族長が楽しそうに見ていたこと、その赤ん坊を連れて帰り自分の息子として扱ってきたことを語る。

このシーンはへたをすると単なる命乞いの浪花節になるところをクラークゲーブルが深みのある声で淡々と語るので実に良い。

ラルーのダブルバインドが助ける側に傾く。

そこに北軍の上官が登場。ラルーはすかさず手錠をヘイミッシュにかける。

上官殿、ヘイミッシュを捕まえました。懸賞金は私のものですね。

黒人には金は要らないだろう? 私の成果にする。

それはお断りです。といった会話の中にさりげなくラルーは「鍵」という言葉を織り交ぜる。

ヘイミッシュが手錠を見ると鍵がさしてある。

ヘイミッシュ、上官の部下2人に連行される。

上官とラルーは戦果の配分について話し始める。お前は黒人なんだから金をやるから栄誉をおれに寄越せとかなんとか。

ラルーは考えるふりをして外を見る。ヘイミッシュが手錠を外し、2人の兵士を殴り倒して脱出するのを見届ける(これもロングを生かした良いシーン)。

金も栄誉も私は不要です。そうか、お前は賢いニガ……ネグロだな(こういう内心の示し方は脚本の隅々まで行き届いている)。

ヘイミッシュとマンティは船に乗る。

ラルーの去就の緊迫があるシーン。ラルーは残ることを選択する。

おもしろかった。


2023-01-08

_ 世田谷文学館で萩原朔太郎

萩原朔太郎は、二匹のネコが屋根の上でこの家の主人は病気ですと話し合う詩と、おそらくサントリーのTVCMで見た川上澄生の挿画に惹かれて猫町がきっかけで中学生の頃に親しんだ。

街のポスターを見てそれを思い出した。というわけで世田谷文学館に行く。連休中なので混んでいるだろうと覚悟して行ったのだが、拍子抜けするほどがらがらで詩人の寂寥がある。

展示は実にうまくできている。最後に種明かしがあるが、生涯にわたる作品群をあたかも一遍の書物のように折り畳み開いた中を巡る。ムットーニの箱(この作家は、クエイ兄弟から毒を抜いて、かわりに不可思議な感傷と清潔さで世界を箱の中に構築する不思議な人だ)による朗読や、天井から腰のあたりまでを覆う巨大な詩、それから各種のオマージュ(詩を構成する字による万華鏡はおもしろい)で構成されていて、全体にモダンなセンスが実に心地よい。

それで知ったが最後の詩集の氷島は読んだことがなかった。

併設が下北沢の文壇地図で、これはまったく知らなかったので、その点からもおもしろかった。東郷青児と宇野千代、萩原葉子と森茉莉、間を縫うように坂口安吾や高木彬光、横光利一などが入る。最後は駆け足となり岡崎京子で東京ガールズブラボー。

小学校中学年と低学年用に迷宮が作られていて、子供が羨ましい。

そういえば萩原葉子(ダンスホールが縁で祖母から憎まれるが、親が憎い(世間体的にだろうが)からといって子供をいじめるのは最低だ)の作品はまともに読んだことがなかったなと気づき、ミュージアムショップで購入した。

P+D BOOKS 天上の花・蕁麻の家(萩原葉子)

_ ワンスアポンアタイムインウェスト

妻がテレビで西部劇を見ているので途中から見始めた。髭がないチャールズブロンソンと実に憎々しげな顔を作ったヘンリーフォンダが出ている。見始めたのは、列車の中をチャールズブロンソンが覗き込んでいると後ろから銃を突きつけられる場面から。

妻によれば、もうプログラムピクチャ―の西部劇はやめたと宣言したセルジオレオーネのところに、パラマウントが巨額の製作費を叩きつける。金は欲しいけどなぁと迷っているうちに、ヘンリーフォンダが悪役を引き受けたり(ジェーンフォンダ曰く償いであろう)、ダリオアルジェントとベルトルッチが脚本を引き受けたりと、単なる西部劇ではなくなったので引き受けることになったらしい。音楽はエンニオ・モリコーネ。

シネスコなのだが、やたらとアップが多い。が、実にヘンリーフォンダとチャールズブロンソンがうまく顔を作るし、ここぞとなると(特に印象的なのは悪辣な地主とヘンリーフォンダの出来レースを破壊して女主人公(忘れたが有名な人)の窮地を救って酒場でまったりしているところに、中央のドアが開きヘンリーフォンダが立ちはだかったりする(逆光で美しい。というかヘンリーフォンダの姿勢の良さが素晴らしい)。

音楽がフンチャチャフニャフニャみたいなとっぽい感じで悪くない。

理由はまったくわからないが、悪の権化のヘンリーフォンダがなぜかチャールズブロンソンだけはすぐに撃ち殺さないのは、自分のために死神を用意したからだろう。あるいはゴーストライダーなのかも知れない。ハーモニカが重要な小道具で登場。

おもしろかった。


2023-01-02

_ tdiaryの更新

以下を実行

・ruby-3.2.0のmake前に

apt-get install libyaml-dev

・tdiary.confは以前のを丸コピー

・bundle install (以前、net-smtpを自分で追加したのを覚えていたので真似したら重複定義になってしまった)

・chmod -R a+r .bundle/ruby/3.2.0/gems/mail-2.8.0/lib/mail

その他、bundleが失敗するので、host rubygems.orgして取得したIPv4アドレスをhostsに定義(www.rubygems.org, index.rubygems.orgも)


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