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日々の破片

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2019-09-15

_ ロイヤルのファウスト

上野にロイヤルのファウストを観に行く。

マクヴィカーの演出は一種の円環構造を描いているように見えた。

最初、下手から謎の人物が出て来て人々を連れて上手へ消える。その後は出てこないのでなんだったのだろう? と思う。

ファウスト(グリゴーロ。すごく良い)は赤い部屋着をまとって世を呪う。悪魔と契約をしても良いと歌ったところで、「来ましたよ」とそっけない字幕とともにメフィストフェレス(ダルカンジェロ。この人も抜群)登場。あまりの気安さが楽しい。

最後は、十字架からイエスが降りてくる(2幕で剥がれ落ちるのと何かの対称かも知れない)が、このイエスは多分、冒頭の謎の人物ではないだろうか? するとメフィストフェレスの部下もそちらに集まって行く。メフィストフェレスはしょうがないなぁと下手に一人立ち去る。ファウストは赤い服で崩れ落ちたままで動かない。

冒頭とつなげれば、ファウスト末期の夢とも読めるし、お話通りにマルグリート(ソレンセン。この人も素晴らしい)によって一緒に救済されたとも読めるし、取り残されたともとれる。おそらく末期の夢なのだろうが、実にきれいな終わらせ方だった。

とにもかくにも歌手がいずれも素晴らしく、パッパーノはパッパーノだしロイヤルとオルガン奏者は立派だし、予想していたよりはるかに良い舞台で実に良いものを観れた。それにしても演出は覚えているのに、音楽はほぼ忘れてしまうのは不思議だ(でも、どこかにしまわれていて流れると思い出すのだろう)。そこがグノーはグノーだということなのだろう。

それにしても、あまり聞かないようでいて、ここぞとばかりに歌われる歌をどれも知っている(しかしメロディは後になると思い出せない。どこかにしまわれて、流れると取り出される仕組みのタイプの曲)のは不思議だった。

特にジベールが3幕の冒頭でマルグリートの部屋へ続く階段に残すところの歌の不可思議な上昇して落ちる音型にすごく記憶があるのだが、この曲だったかどうかが怪しい。

Diva Divo(Didonato, Joyce)

(子供はディドナートで聞いてるからだろうと言うし、確かにこれは手元にあるが、ちょっと違う気がする)

3幕では、2階の窓辺でファウストのことを歌うマルグリートと路上のファウストをつなげるためにメフィストフェレスが階段を持ってくる演出がおもしろい。他の演出ではどのようにしているものかちょっと知りたい。


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