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日々の破片

著作一覧

2013-12-19

_ 読書記録

Kindleアスキー安売り祭りのときに購入した本などいくつか読了しているので記録。

死体は生きている (角川文庫)(上野 正彦)

うーん、説教臭さが鼻についたが、立派な人ではある。

死体をかっちりと調べることで、もし、その死が天意ではなく人意であるならば、死者の尊厳のためにも死をもたらした生者に鉄槌をくだすべしという強い意志と信念があることはわかった。その意気はそれなりに素晴らしい。

のだが、間違いなく、尊厳と権利ということに関しては、尊重すべきは、冤罪被害者>>(越えられない壁)>>被害者の遺族>被害者であり、現行の中世並みと他国から評価されている制度下では、このおっさんの思い込みで冤罪で殺されたり一生を牢獄送りにされた人がいないとも限らないところがイヤな気分となる。最新の科学でございます、遺伝子であります、だから絶対であります、と宇都宮のバスの運転手を人殺し扱いするような事例が現にあるわけだ。

というわけで言っていることは正しい。どんぶり勘定で自然死、病死と判定するのは死者の尊厳を傷つける。それはそうだろう。科学的に正しく死を評価すべき。それも正しい。

遺族が転落死ではないか、なぜならば痣があるというのに対して、それは死斑というものでなぜならば……と説明するところなど、なるほどそういうものなのか、と知らないことを知る喜びもある。自分で自分の首を絞めるというような妙な自殺方法(それで死ねるの?しかもうつぶせって、誰かに首しめられたような死に方。というパターンがそうだと思う)の説明も興味深かった。失火による焼死ではなく、絞殺した後に証拠を隠滅するために燃やしたと、真っ黒黒助になった遺体の内耳に残った痕跡から証明していくものなどなかなかおもしろくなくもない(あまりに事件の内容が下世話かつステレオタイプなので読んでいて不愉快になったので、死体の観察の説明以外は評価できないので、なくもなくもなくもない、程度。逆にあまりの下世話なステレオタイプさに、検察だか警察だかが作ったシナリオに無理矢理無実の人がサインさせられたのではないかという気さえする。その場合は、このおっさんの誤判断ということだ)。

結局のところ、より事例を増やしていくことが重要だろうから、東京都以外にまともな検死のための機構がないというのはあらためていくべきなのだろう(と、この本ではなっているが、現在もそうかはわからない。が面倒くさいから自殺、面倒くさいから病死というのは地方ではありそうに思う。で、面倒なことに殺人ということにされてしまって面倒だから手近にいた気の弱そうなバスの運転手を犯人ということにしてしまえ、というのもいかにも地方らしい)。

それにしても、勤続年数と検死数をくらべると一日平均3~4人の遺体を解剖していることになって、すごい人だなぁとそこは職業人として尊敬に値するのは間違いない。

唐突に祖母が入浴中に亡くなったことを思い出す。留守中に風呂に入っている間にお迎えが来たらしい(正直、実に良い死に方だと思った。苦しんだ様子が全然なかったし)。こういう場合は不自然死となるらしく、叔父が混乱しまくって(風呂に入っているので暖かいから正直生きているのか死んでいるのか良くわからなかったってのがある)救急車を呼んだら、一緒にやってきた(ということは死んでいるかも知れないとは説明したのだろうな)警官がお前が殺したんだろうと言わんばかりに乱暴な口調でぐだぐだ抜かすので抗議したものだ。親を亡くしたばかりの人間なのだから、お悔やみのひとつも言ってから口を開けば良いのに、まったく教養のないやつは困る。で、たぶん、東京都なのだから検死の解剖はしたのだろうなと上述書を読んで(途中でおれは帰ったので最後どうなったか知らないのだ)考える。解剖だ、検死だというと、何か死体をぐちゃぐちゃにされるような印象があるようだが、かえってきれいにしてお返しするくらいだと著者が書いているが、確かにそうだなと、お棺の中の姿を思い出すと納得する。

今日、派遣をクビになった 15人の底辺労働者の実態 今日、ホームレスになった(増田明利)

byflowで見かけて興味を持って買って読んで、妙な読後感。

それは確かに、自業自得でホームレスのような人もいるのだが、むしろそういう人は前向きロケット団みたいな性格でむしろ筆者のほうが一人で心配しているような感じになる。

それに対してやはり自業自得感が無い人のほうが読んでいて陰々滅々としてくる。天道理不尽なりということですなぁ。が、どうにも違和感がある。

前向きロケット団に対する著者の評価(各章1人を取り上げていて、扉に対象の人物の簡単な著者による第一印象が書いてあり、本文は独白調の聞き書きという体裁なのだ)が低いのに内容はやたらと明るく前向きで読んでいて空元気は湧いてくるのに対して、著者の評価がたとえば「一流企業の営業マンで通用する」みたいな無内容でも世間的には高評価っぽいものの場合は内容が悲惨で、圧倒的に後者の収録数が多い(著者のバイアスだと思うのだが、もちろんランダムに抽出したら後者の割合が多いということかも知れない)。

そうか、しょうがないかも知れないが、受ける印象がどうにも愚痴っぽいのだ。

一度ホームレス化すると負のスパイラルに入ってしまうという仕組みはわかるように作られているのだが(職を失う→とりあえずのつなぎの職に入る→つなぎなので職歴としての価値がない→賃金低いので長時間働く必要がある→それ以外のことができない→職歴がないのでろくな仕事がない→とりあえずつなぎの職に入る→抜け出せない+一度住居を追われると頭金(敷金とか礼金)や保証人が手に入らないので家を借りられないのでホームレス)、まあ、こういう事例がたくさんあれば、家族は持たない、家は買わない、車も買わない、いざというときには現金のほうが重要なので保険や投資はしないとか、そりゃそういう風潮になるよなぁとは思う。

が、やはり違和感がすごくある。なんか違う気がするのだった。


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