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日々の破片

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2010-10-06

_ ドサ回りのもの悲しさ

ドサ回りという言葉があって、あまり良い意味ではない。もとは島流しのことだったりするし、Wikipediaには情け容赦なく『表舞台で華々しく活躍する一線級の芸能人ではなく、二線級以下の人々の活動を示すことが多い。』とか書かれている。

ドサ回りというと、おれが最初に思い浮かべるのは、明日のジョーが力石を殺してしまったショックからテンプルを打てなくなって地方巡業をするところとかだ。矢吹丈は落ちぶれても矢吹丈だし、周りのボクサーもそれなりの連中ではあるのだが、どうにも運がなくて祭りの余興試合みたいなものをしている。

子供の頃に読んでなんか不思議な感動を覚えたし、今でもちゃんと覚えているのだが、梶原一騎は本人はほとんどヤクザのような男のようだが、変なところで弱者になってしまった人間に対して優しい視線を持っている(任侠ってのはそういうものだとも言えるし、もしかすると、このあたりのエピソードはちばてつやのものかも知れないけど。ちばてつやはまさにそういう作家だ)。このエピソードは結局、カーロス・リベラという猛烈に強い奴をテレビで見た矢吹丈が闘争心をかき立てられて東京に戻ることでけりがつくのだが、そのきっかけを与える男との妙な交流が良い味を出していた。最後に強烈なボディブローをかますわけだが。

あしたのジョー 全12巻セット (講談社漫画文庫)(高森 朝雄)

で、子供が行きたいとか言うのでブロードウェイ・ミュージカル・カンパニーとかいうのをオーチャードホールに観に行ったのだが、これがまさにそんな感じでどうにももの悲しい。

何しろなんだかよくわからない団体だからプログラムを買って出演者を見ると、基本的にはフランスの楽人で、はてこれはなんだろうかと思ったりするが、ボリス・ヴィアンの昔からフランスの楽人はスィングが得意だったりするから、それほど無理はないのだろう。全体、古い曲が多かった。

で、それでも金を取って興業を打つだけあって、それなりに芸達者で名場面集みたいな構成のショーを、まあうまくやっている(レミゼラブルとかは良かったと思うが、ドリームガールズの悪いことに手を染めようあたりはちょっともっさりしている)ので、普通に楽しめる。途中、おれの大好きな雨に唄えばのところではタップを踏みながら歌うところで、あーあ、無理しているなぁというのはあったけど、それにしてもどうにも空虚感が漂うのであった。一体、なんでそういう感じがするのだろうか? と考えてみても良くわからない。芸能というのは不思議なものだ。

1階席はほぼ満員で、やたらと年寄が多いなぁと思ったりしたが、それなりに客は入っていて、この人たちは何を見てここに来たのかなぁ、同じようにチラシを見て来たのかなぁとか、いろいろ思う。

(そもそもeplusでチケットを購入するときに、不可思議な売られ方をしていて引っ掛かったというのもあるのだが、eplusは微妙な商売の仕方をしている)


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